今週のお品書き

  誕生日のブレゼント、サンキュー

 父ちゃん、このあいだは誕生日のプレゼント、ありがとう。父ちゃんが買ってくれたゲームソフト、前からほしかったんだ。お年玉で買おうと思ってたやつだから、うれしかったよ。たまには弟にも貸します。


 今年はプレゼントをもらえないと思ってました。学校の成績は落ちるし、塾も途中でやめちゃったし、友だちとか、弟ともよくケンカするしね。父ちゃんすぐにブチ切れて、オイラの頭をなぐるか、「とっとと家を出てけ!」だもんね。母ちゃんもこのごろは、オイラの味方をしてくれなくなったし、なんか、孤独って感じだったんだ。マジにさ、このままだと、ワルガキの道にハマっちゃうのかなって。


 ここんとこ、なんかイライラしちゃうんだ。なんでかよく分かんない。先生とか友だちは、反抗期だっていうけど、そうかな? 反抗とかっていうんじゃなくて、破壊したい気分なんだよ。なんでもかんでも。オイラ病気かな。ヤバイのかい? こんなこと先生に話したら、もっとヤバくなりそうだから、話さないけど。


 このあいだ、じいちゃんちに泊まりにいっただろう。そのときじいちゃんが、「おまえんとこの父ちゃんだって、中学時代はケンカはするし、はむかうし、手がつけられなかった」っていってた。それ聞いて、ちょっと安心したんだ。なんだよ、父ちゃんだって、オイラと同じことしてたんじゃんって。それに、いじめをしてないってとこも同じだよ。


 オイラ、すぐにキレそうになるけど、じいちゃんちの畑で野菜とか果物なんか見てると、なんか、気持ちがやさしくなるような気がするんだ。なんでかよくわかんないけどさ。


 「おまえ、中学卒業したら、園芸とかの高校に行け」ってさ、じいちゃんが。それもいいかもな。オイラ、野菜とか果物、好きだし。それで、オイラの気持ちもやさしくなって、人にケンカをふっかけることもなくなれば、父ちゃんや母ちゃんだって、安心するだろう。そうすっかな。

 学校に行くのヤだけど、ガマンだよな。キレそうなことばっかりだけど、友だちがいるし、好きな時間もあるし、いい先生もいるしな。園芸とかの高校に行けるように、がんばってみるよ。


 それに父ちゃん、オイラへの誕生日プレゼント、今年で終わりにしてくれ。もう、いいや。こんどからは、買いたいものは自分で買うよ。夏休み、じいちゃんちの畑でバイトやるしな。バイトのお金で、弟になんか買ってやるよ。父ちゃんにはビール、母ちゃんには口べにかな。楽しみにしててくれ。


 父ちゃん、あんましガミガミ怒るなよな。それにお酒、飲みすぎだ。これからは、怒ってオイラをなぐる前に、話しを聞いてからなぐれよな。(2010年10月3日)

父 40歳:自営業
息子 13歳:中学1年





今週のお品書き

  借金、ようやく完済しそうです

親父さん、元気ですか。
 俺のほうは相変らずの生活。毎日、仕事、仕事に明け暮れ、飲み歩くことはほとんど無し。たまの休みは、格安のバスツアーや、登山などを楽しんでいる。とても健康的な生活を送ってるから、安心してほしい。


 心配させた借金も、来年には完済しそうだ。正直、ホッとしている。
 振り返ってみれば、馬鹿な真似をしたもんだと思うよ。スナックで知り合っただけの、素性もそれほど知らない人間の連帯保証人に、簡単になっちまうんだもんな。「絶対に迷惑はかけない。月々、ちゃんと支払える額だから」と懇願されれば、なんとかしてやりたいと思うもの。しかも小学生の娘が重い病気にかかっていると聞けば、なおさらだ。


  で、相手は俺を連帯保証人にして、自分の店の改装資金とか称して、サラ金から300万円を借金。だけどすぐにトンヅラ。店なんて無し。しかも相手は独身だった。


  甘かった。最初からだますつもりだったんだ。社会人になったばかりの俺に300万円なんて払えるわけがない。親父さんに泣きついたら、ボロクソに怒られた。当然だよな。


 結局、親父さんの知り合いの経営者が、親父さんの替わりにサラ金へ全額、返済してくれた。俺はその経営者に、毎月、3万円づつ返済することになった。最初はなんで親父さんが返済してくれないのか。なんて冷たい父親なんだろうと思ったよ。そして、俺をだました相手をなんとしてでも探し出し、殺してやろうかとも考えた。だけどその経営者に怒られた。「親父さんに返済してもらったら、君には甘えが出てくる。それにだました相手も悪いが、君にも責任はあるはずだ」と。


  人間って不思議だな。遊んだり買ったりするときは、抵抗なく支払いができるのに、借金の返済となると抵抗がでてくる。悔しい思いをしながらの返済を続けるうちに、気づかされたよ。お金の大切さ、それに自分のこれまでの浮ついた生活に。


  弱い性格も見えてきた。嫌われたくないから、いい顔をしたり、相手のいいなりになる。これまでにも、生命保険に何口も加入させられたり、数十万円もする英会話の教材を買わされてきたもんな。そのたびに親父さんやお袋さんが尻拭いをしてくれた。だけどそうしたことを続けていれば、いつまでたってもバカな息子は一人前の大人になれない。


  最近、ようやく断る勇気が出てきた。嫌われてもいいという余裕も持てるようになった。もちろん、お金は借りない、貸さない主義。職場では堅物、堅実クンというニックネームをもらうようになった。仕事にも真面目に取り組めるようになった。本当に感謝してます、親父さん。来年の借金完済日には、共に祝杯を。(2010年10月10日)

父 65歳:地方公務員
息子 30歳:私鉄事務職





今週のお品書き

  可愛い妹ができちゃった この夏


  お父さん、今年の夏休みはとても楽しかったよ。サンキュー。

 何年ぶりかで家族そろっての夏休み。それも三泊四日の宿泊。クソ暑い都会から離れ、海辺の宿でのんびり過ごすって聞いたとき、そりゃあメチャうれしかったさ。海に面したプール付きのおしゃれなホテルを想像してしまった私。

 だけど考えが甘かったね。お父さんの会社と契約している、見た目もジミな民宿だったんだもん。台風がきたら壊れちゃうんじゃないか、そんな建物だもんな。ため息ついちゃうよ。しかもトイレ、お風呂は共同。

 それに部屋は6畳。これで3人はキツい。と思ったら私だけ個室。ちょっとだけ喜んだのもつかの間。お父さんの知り合いの小学生と一緒だなんて、そりゃないっしょ。

 最初はブンムクレさ。ムカついたさ。なんで知らない小学生のガキンチョと一緒に寝起きしなきゃなんないのかって。でも、カワイイんだよね。このガキンチョがさ。小学校2年のミカちゃん。初めてあったのに「お姉ちゃん、お姉ちゃん」って、そばから離れないんだもん。このコも一人っ子だったんだ。

 ミカちゃんって早起き。朝の6時には起きて、ぐっすり寝ている私を起こすんだ。仕方ないから朝の浜辺をお散歩。おかげでお腹がすいて朝ご飯を食うわ、食うわ。涼しい午前中はミカちゃんの宿題のお手伝い。

お昼を食べたら思いっきり海水浴。泳げないミカちゃんも私の名指導でとりあえず浮かべるようにはなった。夜は夜で食べる、花火で遊ぶ、ぐすっり寝る。ミカちゃんってば、私のオッパイをギュッとつかんじゃうし。でもカワイイから許したけどね。

 それにすっごく素直。私の言うこと最後まで聞いて、それで意見があればちゃんと言う。それに比べて私ってば、話の途中で反論しちゃうんだもんな。そんなもん聞きとうないわいって。かわいくないよね。

 だけど、なんでこんなにカワいくて、素直で、天使のような女の子をお母さんは捨てたんだろう。なんで離婚なんかしちゃったんだろう。信じらんないよ。ミカちゃんがかわいそうだよ。大人って勝手だよね。どん理由があるのか知らないけどさ。

 最後の日にミカちゃんのお父さんが迎えにきたけど、ミカちゃんなきながら私の足を両手でつかんで離さない。仕方ないから私たちの家に一週間のお泊り。それがまた楽しかったよ。すぐに私の仲間のアイドルになっちゃってさ。もう私たちは年の離れた、家の違う姉妹じゃ。ミカちゃんにさびしい思いはさせないぞ。

 ミカちゃんという妹ができて、少し大人になった今年の夏休み。お父さん、本当にありがとうね。(2010年10月17日)

親父 40歳:運送業
娘 16歳:高校1年



 

今週のお品書き


  競馬って人生そのものだね




 親父さん、元気ですか。ようやく涼しい風が吹いてきたこの頃、競馬に出かけるにはいい季節になってきましたね。もちろん、出かけてるんだろうな。調子はどうですか。


 実は俺も始めたんだ、競馬を。驚いたかな。無理もないよな、あれほど競馬を嫌っていんだから。まあ、心境の変化ってやつだね。


 確か小学校に入学した頃だと思うよ、親父さんに競馬場へ連れてってもらったのは。あの雰囲気と混雑には参ったね。誰もが殺気だち、大声でわめき、酒の臭いと煙草の煙で意識を失いそうになったもんな。


 そんななか、黙って競馬新聞に目を通し、馬たちが駆ける姿を真剣に追っていた親父さん。勝てば場内の売店でお菓子やアイスクリームを買ってくれたよな。だけど勝っても負けても寂しそうな顔をしている親父さんが不思議だった。


 俺が競馬を嫌ったのは、お袋さんの影響だね。「ギャンブルだ」、「人間の勝手な都合で走らされる馬が可哀想だ」、「怪我をしたら馬肉の運命なんてひどい」。などなど、耳にタコができるほど聞かされたからな。嫌いになるのも仕方ない。そのうち親父さんまで軽蔑するようになった。


 何度か競馬場に通うち、だんだん分かってきたような気がする。親父さんの寂しそうな顔の理由が。それというのもつい最近、叔母さんから親父さんの兄弟と家族の話を聞くことができてね。それで想像だけど、自分と馬とを重ね合わせていたんじゃないかと。俺が子供の頃によく聞いたよな。「お父さんが選んだ馬は強いの?」って。そしたら「分かんないな、対抗と穴だから」。弱ったように笑いながらいつもこう答えてた。


 男五人兄弟の四番目に生まれてから、常に兄弟同士の競争だったらしいね。成績を競わされ、スポーツを競わされ、就職先まで競わされた。だけどどれをとっても兄弟のなかではどん尻。長男と五男は一流企業。次男は医者、三男は弁護士と、無名の中小企業に就職した親父さん以外の兄弟は、元官僚だった爺さんの期待に見事に応えた。それからは兄弟とも、爺さんとも疎遠になった。


 対抗には親父さんの意地がかかっていた。穴には夢をかけた。俺はそう読んでいるんだ。深読みと笑うかもしれないけどさ。


 それはさておき、競馬はいいよな。広大な空間で人と馬が一体になって熱狂するんだから。俺も親父さんと同じく小額の穴狙い。勝てばうれしいけど、負けても悔しくはない。むしろ無心になって疾走してくれる馬たちからは、いつも勇気をもらい、ひたむきさを学んでいる。今度、孫の手をひきながら、競馬場まで夢を買いに行かないか。(2010年10月24日)

親父 食品製造:63歳
息子 団体職員:32歳


今週のお品書き

  ケチケチ生活にも限度があるよ

 お父さん、お願いだから「溜めるるクセ」を直して。このままじゃ、ウチはゴミの山になっちゃうよ。

 新聞紙やチラシ、雑誌なんかは何カ月分も溜めておくし、届けものの箱やらダンボールはちゃんとたたんで積み重ねておく。外でもらったティッシュペーパーは、一枚づつ取り出して空き箱に詰めかえる。山でとってきた山菜、海で釣ってきた魚は冷凍にしておく。ほんと、うっとうしいし、ビンボーくさいったらないじゃん。

 家族みんなの物置が、お父さんのために占領され、冷凍庫だってなにも入れることができないんだよ。最近じゃ物置が一杯になって、廊下やベランダまで物で一杯。それを見るたびに気分はブルー。ヤル気ってものが湧いてこない。


 物を大切にする気持ちは私だって分かるよ。だけど限度ってもんがあるじゃん。ちょっと異常だよ。捨てなすぎるんだよ。捨てる勇気がないんだよ。

 「いつか使える日がくる」って言うけど、いつ使うのさ。ほとんど使ってないんじゃん。山菜や魚だって料理したことある? 何年もたってんだよ。しかもほとんど腐らせてばっか。早めに食べてあげないと、それこそ山菜や魚がかわいそうじゃん。命の無駄じゃん。


 勝手に捨てると、怒るしね。ガキンチョみたいに、ムスっとして口もきかない。お母さんなんか、ほとんど諦めてるもんね。勝手にすればって感じで。

 最近じゃ、お風呂の水を代えるのは十日に一度にしろとかって言うけど、ジョーダンでしょ。夏の時期なんかどうすんの? クサいしドロドロになるし。お父さんが入ったあとが一番よごれてるんだよ。自分で掃除してから言って。

 うざったいよ、まったく。自分だけで節約、ケチケチ生活してればいいのに、みんなに押し付けるんだから。何が目的なの? そんなに節約、ケチケチ生活するのは。

 バイト先の店長がコワい話してくれたよ。節約、ケチケチ生活に励んだ結果、何百万円も貯金できた人がいるんだけど、体をこわして病気になり、結局、貯金ぜんぶ使ったうえに借金したって話。私には笑い話には聞こえなかった。現在の我が家もそれに似たり寄ったりだもん。お父さんのためにみんなの心がヘコんじゃってるし、ビンボーくさくなってる。そのうち病気になるかも知れないよ。そしたらお金がかかっちゃうんだよ。

 ちょっとぐらい無駄したりぜいたくしたりしてもいいじゃん。それで家族が元気になれるんならさ。少し考えてほしいよ。(2010年10月30日)

 

親父 45歳:保険代理店

娘 16歳:高校1年