第1回講座 1月23日(土) 午後2時より

講座名 「遠山家日記より 八戸藩のサムライの生活にせまる」

講師 三浦忠司氏 (昭和23年生まれ八戸高校、弘前大学卒業青森県立高等学校教諭を経て、八戸市編纂室長となり平成20年八戸市立美保野小中学校校長を退職。現在、八戸歴史研究会会長、安藤昌益基金会長、八戸地域歴史団体協議会会長、安藤昌益記念館館長)

遠山家日記とは

遠山家は2代八戸藩藩主直政の代に召し抱えられて以降、幕末に至るまで八戸藩を支えてきました。現存する日記は、遠山家7代目・庄右衛門から始まります。日記には、武家の冠婚葬祭に関わる事柄をはじめ、当時の武家生活が詳細に記されています。寛政年間は八戸藩の財政悪化を反映し、家計のやりくりに苦心している様子がつづられています。現在ほど医学が発達していなかった
当時の記述には、病気にかかわる記事が多数見られます。18年分の日記だけでも様々な、一つの武家のドラマが隠されているのです。

大出世! 遠山家七代目の平馬(のちに庄右衛門と改名)は、文化元年(1804年)の三月に御目付格に、翌二年の正月には目付役(諸役人の勤務から政務全般の監察役)に命じられ、さらに寺社町奉行(町政の執行)も兼任する。

江戸への出張は辛いよ! 北海道の松前に異国船が到来し、乱暴狼藉しているとの報告が幕府に。そこで八戸藩は庄右衛門を江戸に派遣、蝦夷地御用の武器類卸下しの御用掛りに任命する。つまり武器の新規買い上げである。といっても貧乏藩の八戸ではそんな資金などない。こうなれば百姓やら藩士などから強引に取り立てなければならないかと、腹をくくった庄右衛門だったが、運よく幕府より松前出兵の人員が足りたので、出兵には及ばずとの連絡が入る。安堵する庄右衛門。もし出兵に応じていたら、間違いなく藩は財政破綻、侍は生活破綻をきたしていた。

火事貧乏だよ! 文化八年(1811)の2月、江戸の八戸藩上屋敷が炎上。さらに文化十一年(1814)の9月にはやはり江戸の下屋敷が全焼する憂き目に。この上下屋敷の再建には莫大な資金が必要。百姓、町人はもとより藩士にまでその負担が重くのしかかった。折りしも藩では凶作が続いており、藩財政は逼迫。負担するにも限界があった。そこで藩では御用商人に助けを求めたものの、うまくいかずに物価の上昇を招き、人々の生活は一層苦しいものとなった。

武士のウンチは高く売れる! 侍の排泄物は栄養豊かなので、田畑の肥料としてひっぱりだこだった。遠山家ではこれまで知り合いの百姓に排泄物を与えていたのだが、排泄物と引き換えの大根は数が少なく、形も小さく、不満だった。そこへ新しい取引相手の百姓が登場。下肥一駄(馬の背中に二つの下肥分)につき、大根三駄、さらにはニンジン、ごぼうも付け加えるという。貧乏な遠山家にとっては嬉しい限りである。  

正義の味方、庄右衛門! 百姓、町人による事件、トラブルは、藩という公的仕組みのなかで解決されるものであった。しかし藩の仕組みが十分に機能していなかった八戸では、百姓、町人とのつながりがあった遠山家に、その解決などを相談したり、緊急避難的に駆け込む女も少なくなかった。湊(みなと)に住む「そよ」という女が遠山家に駆け込んできた。実父と暮らしていたがその実父が欠落ち(失踪・逃亡)したため、湊の知り合いに養女となったのである。だがこの養父がとんでもない男で、事あるごとにそよに暴力を振るい、挙句の果てには売り飛ばすという。そこで庄右衛門はそよの親戚にあたる庄吉に引き取ってもらうことにした。これにて一件落着!

とはいかなかった。庄吉に引き取られたそよを拉致しようと、男2人が庄吉宅に侵入したのである。庄吉と母が男2人と格闘の末に賊の一人を捕らえた。遠山が仔細を追求すると、犯人は名主の倅であった。そよに惚れての犯行だったのである。何度も結婚を申し込んだものの、断られた末の愚行。庄右衛門は名主である親を呼び、そよ、庄吉たちに詫びさせたのち、犯人の倅は親戚預かりにすることで一件落着! とはいかなかった。今度もそよ目当てだよ。この事件を知った五戸の男が庄吉宅に参上、そよをもらいたいと言う。庄右衛門も立会って聞いていたのだが、どうも怪しい。どうやら女を売り買いする女衒の類だと判断し、早々に帰ってもらった。この騒動の「そよ」という女、相当な美人だったに違いない。この他にも色恋沙汰、夫婦間の暴力など、庄右衛門を頼る人々は多かったようだ。

侍に「痔」はついてまわる 藩士の病気ベスト5発表! 1「疝積(せんしゃく)」(胸や腹の痛み)   2「上衝(じょうしょう)」(頭ののぼせ)  3「痔」  4「動悸」  5「脚気・痰咳など」
このうち痔には相当悩まされようです。なにしろお侍は座ってする仕事が多いし、馬にも頻繁に乗るし、お偉いさんなどはいつも籠に乗ってますからね。痔になるのも当然。痔には泣かされたそうです。