八戸自由大学第8回講座より抜粋

講座名
 工学と医療福祉  高齢化社会での医工連携の必要性、ライフイノベーション


講師・井口泰孝氏

井口泰孝氏プロフィール
 
1943(昭和18)年 静岡県浜松市生まれ
1970(昭和45)年 4月 東北大学工学部金属工学科 助手
1974(昭和49)年 4月 東北大学工学部金属工学科 助教授
1976(昭和51)年 7月 文部省在外研究員乙 マサチューセッツ工科大学、米国
1986(昭和61)年12月 東北大学工学部金属工学科 教授
1997(平成 9)年 4月 東北大学大学院 教授(工学研究科金属工学専攻)
1998(平成10)年 4月 東北大学未来科学技術共同研究センター 副センター長・リエゾン専任教授
(?2001年 3月)
2001(平成13)年 1月 東北大学大学院工学研究科金属工学専攻
2001(平成13)年 4月 東北大学評議員(?2003年 3月)
2002(平成14)年 4月 東北大学大学院工学研究科技術社会システム専攻現代技術社会工学分野
2003(平成15)年 4月 東北大学未来科学技術共同研究センター センター長(?2004年11月5日)
2004(平成16)年11月 東北大学大学院工学研究科長・工学部長(?2006年3月31日)
2006(平成18)年 3月 東北大学定年退職
2006(平成18)年 4月 独立行政法人 国立高等専門学校機構 八戸工業専門学校長
2011(平成23)年 国立大学弘前大学常任幹事

主な受賞歴
1983(昭和58)年 4月 日本鉄鋼協会 西山記念賞
1986(昭和61)年 4月 日本金属学会 功績賞
1987(昭和62)年 4月 日本鉄鋼協会 俵論文賞
1999(平成11)年 1月 河北文化賞
1999(平成11)年 3月 日本鉄鋼協会 学術功績賞
2001(平成13)年 3月 日本金属学会 谷川・ハリス賞
2003(平成15)年 4月 知財功労賞 経済産業大臣表彰
2005(平成17)年 9月 日本金属学会 功労賞


学術的専門領域は、鉄鋼、シリコンを初めとする金属およびセラミックスの酸素、水蒸気、水素等のガスとの反応を主とする高温物理化学、さらに、四肢麻痺患者等への機能的電気刺激用電極等、医用材料の開発などである。

さらに、新産業・新プロセス・新材料創出、既存産業の再生・新生を目指して1998年 4月に設立された未来科学技術共同研究センター(ニッチェ)副センター長、リエゾン専任教授として2001年 3月まで産官学連携の仕事に専念してきた。

2001年 1月に工学研究科に戻り、4月より2003年 3月まで東北大学評議員として全学および工学研究科の管理運営にも従事した。
なお、ニッチェの副センター長は2003年 3月まで、技術移転機関(TLO)?鞄喧kテクノアーチの取締役は現在も継続している。

2002年4月に工学研究科内に文理融合型の技術社会システム専攻MOT(日本初)を設置した。
2002年10月に設立された日本知財学会人材育成担当理事(継続)。2003年 4月より2004年11月 5日までニッチェセンター長。

2003年 4月から2004年 3月まで日本金属学会会長。2004年 4月より最高裁判所知財専門委員。2004年11月から2006年 3月まで東北大学大学院工学研究科長・工学部長。

主な研究
超高齢化社会の到来を目前に、失われた生体機能を再建する医療技術への関心が高まっている。治療中においても患者への物理的・精神的負担を軽減し、QOL(Quality Of Life)を向上させる生体機能再建システムが要求されている。東北大学の井口研究室で、歯科分野における生体機能再建を目的として優れた生体適合性を有するチタン系材料と生体内吸収性リン酸カルシウム系物質を複合化したデバイスを作製し、動物実験を含めた生物学的安全性評価を行い、臨床試験まで発展させることを最終的な目的としてきた。具体的には、

(1) 人工歯根へ生体吸収性リン酸カルシウム系材料をコーティングし、生体組織との強固な結合と定着するまでの期間短縮を図るための擬似体液中での挙動を含めた基礎的研究

(2) 生体用電極やメッシュ作製のためのチタン系材料の細線化、擬似体液や生体内におけるチタン系材料の摩擦機構と摩耗粉の影響およびそれらに及ぼす表面処理の有効性、擬似体液内でのハイドロキシアパタイト生成挙といった内容の研究を行ってきた。


青森、北東北を活気づけるには
 現在、日本は中国の急激な経済発展、国内産業のリストラ努力、技術開発による競争力の回復、そして国内個人消費の復活により、歴史にない好景気が続いていると言われている。しかし、東北地域、特に有効求人倍率が日本で最下位の青森県にいるとその実感はなく、ほんとうに復活したのか疑問である。景気をけん引している自動車産業、デジタル家電産業の立地が不十分な地域はどのようにしたら良いのか? 平成18年3月東北大学を定年退職、4月より青森県民、八戸市民となり、公共投資が減少し続けている現状から、経済、政治の中央指向が地域イノベーションを促進できないでいると痛感している。ここ10年間の東北大学未来科学技術共同研究センター:ニッチェ(New Industry Creation Hatchery Center: NICHe)*1、リエゾンとしての経験を生かし、さらなる産学官地域連携を行い、少しでも、八戸、青森、北東北の発展に役立てればと思っている。

 (独)科学技術振興機構(JST)のプラザ事業も盛岡にサテライト岩手ができ、北東北3県をより緊密にコーディネートできる体制ができた。平成17年3月(社)東北経済連合会が中心となり、東北インテリジェントコスモス、東北地域の大学・産業界からなる委員会が「第3期科学技術基本計画への地域からの提言-科学技術を源泉とした地域の産業競争力強化に向けて-」をまとめ、関係各省庁に提出した。さらに、本年1月、東北経済連合会が第3期科学技術基本計画に関する東北7県の産学官へ具体的な提案をし、4月より新たなる活動もスタートした。 今後、大学・高専と地域・コミュニティーの意識の変革、すなわち -学内の理解と協力、学-学連携、地方自治体の絶対的サポート-、倫理、利益相反・責務相反(Conflict of Interest・Conflict of Commitment)の社会認知、ベンチャー・スピンオフ企業に対する個人・社会の意識変化、ベンチャーキャピタルの育成、等々の意識改革と基盤整備を基に、大学・高専・公設試主導の先端研究成果の地域企業への技術移転を行い、既存企業の再生・活性化、そしてベンチャーの育成を東北地域が産業界、地域、コミュニティーと大学・高専と連携、協調し、実現するために、まい進することが重要である。以上は、いずれも、どこでも言われてきたことである。実行する担い手、すなわち、産と社会を知る大学人、大学を知る産業人を少しでも地域に受け入れ、地域で育てる以外の道しか新展開はない。近道はなく、急がば人材育成である。まずは八戸、青森、北東北がターゲットである。