バラエティ番組って、奥が深いと思うよ

 オヤジさん、ご機嫌は如何ですか。俺が作っているテレビ番組、ついにバレたみたいだね。番組の最後に流れるスタッフ紹介に、俺と同姓同名の名前を見つけ、テレビ局に確認の電話をしたところ、自分の息子であることが判明。しばし呆然の後、顔を真っ赤にして激怒。あまりの激しい怒りに、倒れるんじゃないかと家族の全員が心配したと聞きました。

 怒るのも無理はないよね。オヤジさんが最も嫌っているバラエティ番組、「日本国民を愚弄し、骨抜きにしてしまいかねない俗悪番組」。それを製作している当事者だもんな。いつかはバレるんじゃないかと心配していたけど、とうとうその日がきたってわけだ。だからというわけじゃないけど、俺もテレビ業界の末端に生きる人間として、バラエティ番組の良さというものを、また自分なりの意見を言わせてもらいますよ。

 オヤジさんがバラエティ番組を嫌う最大の理由、先ずは人選ですよね。元政治家、元アイドルの主婦、わけの分からない評論家、etc:。それらの人々の「非常識で下品極まりない発言をなぜ許すのか」。確かに問題発言をする人は多いです。しかし、全員が常識的で正義感に溢れる発言ばかりというのは如何なものでしょうか。非常識で下品であり、かつ毒を含んだ発言であったとしても、その真意を汲み取る訓練や余裕も必要なのではないでしょうか。

 俺が最近つくづく怖いなと思うのは、異なった意見、思想を持つ人間に対して、日本人はとても排他的、攻撃的になったという点です。その背景や理由は分からないでもない。多発する凶悪犯罪、政治不信、モラルの喪失など、いくらでもあげることができるでしょう。しかし、冷静さと余裕を持ち合わせないと、いつしか危険な道を歩みかねませんよ。

 オヤジさんが嫌う二番目は番組構成。「テーマの掘り下げが浅く、つぎはぎだらけ」。これはご指摘の通りで、言い訳しません。60分という枠のなかで、一つのテーマを深く掘り下げる余裕はないのです。次から次へとテーマを面白おかしく、分かりやすく提供しなければならないのです。

 馬鹿らしいバラエティ番組ですが、「悩みや悲しみ、苦しみをひとときでも忘れさせてくれた」と、感謝や励ましの電話、メール、手紙も頂戴します。誇りに思いますよ。「バラエティやっててよかった」と。逆にオヤジさんのような方々から抗議や批判の嵐にもあいますが、プロデューサー曰く「こういう人たちは大事にしような。アンチジャイアンツファンと同じようなものだからさ。嫌いだといっては番組見て、批判してくれるんだからな」。テレビ業界とは、生き馬の目を抜くようなところです。(2011年7月3日)

親父 住職:64歳
息子 テレビ製作会社:33歳





  甲斐性なしの彼と結婚します


 「あんな甲斐性なしの男と結婚するなんて許さないよ。もし結婚するんなら、お前は勘当だ。お父さんと同じように、この家を出て行け」。

 というように、私も家を追い出されましたよ、お父さん。でも幸せ。好きな彼と一緒に暮らせるんだもの。

 老舗料亭の女将としてばかりでなく、いくつもの関連会社を経営するお母さんは、男性顔負けのやり手であることは確かです。幼い頃はそんなお母さんに憧れ、そして婿養子でお母さんに頭が上がらない、いつも「甲斐性なし」と、罵倒されていたお父さんを軽蔑していたものでした。

 「男なんてもんは、甲斐性がなきゃ男じゃない。二枚目だろうが、優しかろうが、そんなもんで妻子が養えるほど世の中甘くはないよ。結局、お金がすべてだ。金を儲ける才覚のない男なんか、クズのようなもんだ」。お爺ちゃん(母の実父)がお酒、ギャンブル、浮気にのめり込み、代々続いた料亭を危機に陥れたとき、必死になって立て直しに奔走したのがお母さん。その苦労から、「男は甲斐性」という考えが身についたのは、私にも理解はできますけど。

 だけど、社会人になってから、「甲斐性のあるなし」について考えるようになりました。確かに男性はお金があり、儲ける才覚にも恵まれ、妻子を泣かせることなど無いに越したことはないと思うけど、それだけでいいのかなと。そんな矢先です、ボランティア活動で知り合った彼を好きになってしまったのは。知的障害者の日常生活を様々な方面からサポートする団体のメンバーで、職業はフリーカメラマン。といっても、仕事も収入も限りなく不安定。そんな彼を「将来、結婚したい人」と、お母さんに紹介したのですから、私も何を考えているのやら。

 彼曰く「甲斐性なしの典型男だけど、それでいいのか」と、私に念を押すけど、それでいいんです。彼は確かに甲斐性なしの男で、貧乏な立場だけど、だからこそ弱い立場に立たされている人たちには優しいの。決して無益な争いはしないし、人の弱みに付け込んで生きようとはしない。自分が損をするような事ばかり選び、それでも笑っていられる人。

 お父さんも、昔は銀行のエリートで、そこをお母さんに見込まれて婿養子に入ったけど、商売人には向いていない、優しい事務型タイプ。それがお母さんには気に入らなかったみたい。私の彼もお父さんにそっくり。だけど私はすごく満足しています。お互いに弱い部分、不足している部分をなんとか補って生きていこうとあれこれ考えてくれるもの。今度、彼を紹介しますね。沖縄の美味しい焼酎を飲みながら、甲斐性なし同士、楽しいお話などして下さい。(2011年7月10日)

父 58歳:自営業
娘 27歳:団体職員




 ヤバい業界だけど、俺には向いてるかも

 
 オヤジさん、元気ですか。
 俺のほうですが、就職先も見つかり、なんとかやってます。三流大学卒の俺だけど、空手3段、少林寺拳法2段、そして杖術2段の武道バカが見込まれ、採用してくれたのが風俗と金融関係をいくつも持つ企業で、総務部付けとして配属されたのが役員秘書。とはいうものの、用心棒のようなものです。後ろめたさがあるのでしょう、役員の彼らはいつも「いつ襲われるか分かったもんじゃないからな」というのが口癖で、会社から自宅に帰宅するまで、常に緊張のしまくり。その緊張感をほぐす役目も負っています。

 俺が担当している30代の役員は、某国立大学を優秀な成績で卒業した人物ですが、ワケありの過去を背負っています。彼が少年時代、父親が経営する町工場が銀行の策略によって乗っ取られ、父親は自殺。それが原因で学校では激しいイジメにあい、何度も自殺を考えたといいます。そうした理由等で家族は全国を転々。その間、彼が心に刻んだことは、「生きていくのに必要なものは腕力と知力と金力、それに権力。いつの日かいじめた奴らと世間に復讐してやる」。そして苦学の末に国立大学を卒業。復讐の道を歩み始めるのですが、彼の言葉には鬼気迫るものがあります。それもそのはず、彼は貧しい生活のなかで母親と姉を病気で亡くしていますから。

 国立大学まで出て、わざわざ風俗産業でもなかろうにと思うのですが、彼が才能を発揮し、金力と権力を手っ取り早く得るには、この業界が適していたのでしょう。若くして役員、年収は4000万円以上ですからね。
 
 そんな彼から、「お前、俺の片腕になれよ。腕に覚えはあるんだから、後は智力と金力を身につけろ。道は俺がつけてやるから」と言われています。ここは思い切って彼の誘いに乗ってみようかと思っています。

 定年退職まで「交番のお巡りさん」で終わったオヤジさんは、誠実な人柄と仕事ぶりで尊敬を集めましたが、俺から見れば、無礼極まりない言い方ですが「負け組」です。出世しようと思えばできたのに、敢えて地域密着の交番勤務にこだわった。同期の出世する連中に頭をペコペコするオヤジさんが歯がゆかった。金銭的にもいつもピーピー状態で、オフクロさんは働き通し。成績優秀な兄貴も高校しか出られなかった。男ってものは、いつもギラギラして、喰うか喰われるかの修羅場で生きるものじゃないのかって、いつしか思うようにもなりました。俺の生きる道がこの世界にありそうな気がする。

 ヤバイ業界のヤバイ仕事、それにヤバイ人々の世界。親不孝な息子を歎くかもしれないけど、若いうちに「勝ち組」の道に挑んでみるのも面白いと思う。それがどれほど過酷であろうとも。人を傷つけたり、殺めたり、騙すようなことは決してしないよ。ただし、俺の前に立ちはだかるヤツは誰であろうと、容赦なく倒すけどな。(2011年7月17日)

父 62歳・警備員
息子 25歳・サービス業




 私って「負け犬オンナ」なの?


 「おまえなあ、真面目に結婚を考えないと、あっという間に負け犬女だぞ。どうすんだ、そうなったら」。

 どうにもならないでしょうね。負け犬女だろうが、勝ち犬女だろうが、そんなの私には関係ないもん。余計なお世話。放っといてよ。

 お父さんもお父さんだよ。なにが「負け犬女」よ。一部のマスコミに踊らされて、恥かしいと思わない? マスコミ汚染度、高いよ。職場の先輩の多くは独身で子供もいない人だらけだど、気にしている人なんて誰もいないよ。「私たちってば、負け犬オンナだとさ」って、お茶の時間にお笑いネタで使う程度のもんよ。

 当の女性たちの反応が鈍いのに比べ、敏感に反応したのがお父さんと同じく男性たち。アホ丸出しの下品な上司は、「この職場、なんか負け犬女の匂いが立ち込めているぞ」とか、無能な天下り役員は、「みんな結婚したいだろうから、結婚相談所でも作るか。行列ができる負け犬結婚相談所ってのはどうだ」だってさ。完璧なセクハラだけど、女性たちは完全無視。馬鹿を相手にして好きな仕事を棒に振りたくないもん。

 オヤジ連中もそうなら、若手の男性連中も情けないよ。負け犬女は可哀相、助けを求めているとでも思っているらしくて、「食事かデートでもしてあげようか」「合コンでもセットしてあけようか」の、「あげようか」攻撃。ウザいんだよ、どいつもこいも。

 というわけで、男性たちに対して憤りを感じる今日この頃の私です。
 それにしても、なんでこうも勝ち負けにこだわるのかな。女性たちの多くは関心を示さないよ。そりゃあ、中には勝ち組み男をひっ掴まえて、玉の輿を狙っている女性や、企業戦士として勝ち組みを目指す女性もいるだろうけど、そんなのはほんの一部よ。私の限られたリサーチによると、たいがいの女性は勝ち負けなんかどうでもいいと思っているもん。

 結婚して子供をもうけて、家庭を築くのもひとつの道だし、一生涯、独身で好きな仕事をするのもひとつの道。どれが幸せで、どれが不幸かなんて誰にも分からないし、決められるもんでもないでしょう。仮に「独身で子供もいない女は寂しくて悲しい」と思う人がいたら、その人とその人の考えに共感する人たちでその気持ちを共有すればいいだけよ。私らなんか「勝手にそう思えば」ってなもんだもん。下らないテーマで、全女性を巻き込んで欲しくないよね。そのしわ寄せが関係ない私たちにも及んでくるんだから。お父さんのような男性たちや、結婚至上主義のお母さんのような女性たちからさ。

 私の幸せを願い、私の行く末を心配してくれるのは有り難いことですが、未熟ながらもちゃんと将来のことは考えてます。ご心配なく。(2011年7月24日)

父 55歳:地方公務員
娘 28歳:団体職員




 安定よりもやり甲斐を選ぶよ


 元気ですか、親父さん。
 入社して3年が過ぎようとしています。仕事にもすっかり慣れ、今ではプロジェクトの責任者にも抜擢され、充実した楽しい日々を送っています。親父さんばかりでなく、家族全員が猛反対した今の会社への就職ですが、どうにかこうにかやってますから安心してください。

 中小企業の城下町といわれる羽田にあり、社員は30名ほどの零細企業。しかも構造不況業種の金型屋。「なんのために一流大学で学ばせたと思う。国家公務員のような堅いところ、あるいは大企業のような安定した会社に就職させたいから、高い授業料を払ったんだぞ」。
 親父さんのお怒りはごもっとも。親不孝な息子だと、自分でも反省してます。だけど、やはりこの会社が好きなんです。なんというか、相性がいいというのか、肌が合うというのか。とても伸び伸びと、好きなように仕事をさせてくれるんです。

 僕が入社した当時、会社の設備はひと昔前のものばかりでした。そのために納期は遅れ、価格は叩かれ、技術者のモチベーション、モラル、スキルはひどいものでした。このままでは倒産しかねないと考え、最新設備の導入を訴えたところ、社長に就任したばかりの先輩が、自宅を担保に、銀行から数千万円を借り入れてくれたのです。僕も意気に感じ、最新設備の操作技術、教育のために、半年間は休日も取らずじまいでした。だけど苦労した甲斐があり、顧客と売上は伸びる一方で嬉しい限りです。

 これまで黙っていましたが、社長、すなわち先輩は、大学時代に世話になったラグビー部のOBです。公務員上級試験をパスし、某省に入省したあたりは親父さんと同じですが、先輩は6年でスピンアウトしました。足の引っ張り合いや、稟議と根回し主義、古い慣行に嫌気がさしたそうです。そして自分を常に追い込み、挑戦者であり続けたいがために、苦境のさなかにあった父親の会社を継いだのです。こんな先輩のことを、青臭いと思うことでしょう。だけど、こんな先輩を僕は誇りに思います。
  
 先輩なら、なんとかできるはずです。いつ廃部になってもおかしくなかった、我が母校の弱小ラグビー部。そんな部に先輩がコーチに就任してからというもの、誰もが驚くような強い部になるまで、数年とかからなかったことを、今の会社の在りようと重ねて見てしまう僕です。
将来に対する不安はあります。先輩や社員全員も同じ思いです。だけどその危機感を共有しているからこそ、全員が前進、突進することを厭わない環境が整備されつつあります。
不肖の息子ですが、静に見守ってくれますよう、お願い致します。(2011年7月31日)

父 国家公務員:56歳
息子 会社員:27歳