収入は二の次、情熱が傾けられる仕事に打ち込むお父さんって素敵だよ


 世の中のお父さんたちの平均年収って、だいたい500万円から600万円程度なんだってね。お父さんの顔を思い出して笑っちゃったよ。お父さんの年収なんて、去年はたったの180万円なんだもん。パートのオバサンより稼ぎ少ないかも。

 お父さんの仕事は映画の大道具。どんな仕事なのか、友だちに説明してみるんだけど、すんなりと理解はしてもらえないみたいよ。無理もないか、縁の下の力持ち的仕事じゃ。映画の主役といえば俳優さんたちだし、それ以外だと監督さん、脚本家の人たちが注目されるからね。大道具、小道具さんたち始め、スタッフの仕事って、話題にもならんもん。

 だけどそんな仕事に誇りを持っているお父さんって偉いと思う。マジで。仕事をするにしても、監督さんとか、脚本家を選んでるもんね。「つまらない仕事で時間を潰し、お金をもらうより、納得できる作品に全力投球したい」ってのがポリシー。だから年がら年中、低収入は当たり前。

 私、中学の頃はお父さんのこんな姿勢と仕事をバカにしていた。なんでもっと働いてくれないのって。世の中のお父さんたちは、苦労して、悔しい思いして、泣いて、這いつくばって、家族のために必死になって働いているってのにさ。好きな仕事しかしないお父さんって、基本的にナマケモノか、グウタラだと思ってたもん。だけど、映画関係の専門学校で、様々な裏方の仕事を学ぶうち、私の考えも変わってきた。仕事が好きじゃなきゃ、そして仕事を愛してなきゃ、この仕事は長続きしないって。お金儲けは二の次だもんね。

 私も将来的には映画制作に関係する仕事を選ぶと思う。具体的にはまだ考えてないけど、今後、いろいろとアドバイスお願いするかもよ。そのときはよろしくね、大先輩。

 ところで、今年の秋は、お父さんとお母さんの25回目の結婚記念日だよね。私も多少はカンパするから、二人でどこか旅行にでも行ってきなよ。低収入のお父さん、そして我が家を支えてきたのは、安定したお役所勤めをしてくれているお母さんあってのことだからさ。お母さん孝行してあげてもいいんじゃないの。

 私、お母さんも尊敬しているよ。お父さんの仕事に不満や愚痴も言わず、お父さんが楽しそうに話す仕事に耳を傾けて、自分も楽しそうにしているお母さんを。私って、つくづく良い両親に恵まれたなって思う。

 できれば私も、お母さんのような妻、そして母親になりたいな。
 もうすぐ久しぶりのお仕事、クランクインだね。今からワクワクしているお父さん見てると、私まで幸せな気分になっちゃうよ。お母さんと応援するから、頑張ってね。(2011年12月4日)

父 51歳:映画制作
娘 21歳:専門学校生



  ジイちゃんにもっと優しくしてやれよな


 東京駅までジイちゃんを見送ってきたよ。寂しそうな笑顔してた。1カ月は我が家に滞在する予定だったのに、半月で再び叔父さんちに戻ってしまった。いや、戻されてしまった。オヤジが追い返したようなもんだ。そうだろう、違うか!。

 俺も妹も、そしてオフクロもジイちゃんのことは好きだよ。無口で、たまに話すことといえば昔の思い出話。またかよって思うけど、なんかホッとさせられるんだよな、ジイちゃんの語り口って。優しさを感じる。人を傷つけるようなこととか、バカにするようなこと言わないもんな。

 そんなジイちゃんのこと、オヤジは嫌いだもんな。ジイちゃんが話しかけようとすると、すぐに別の部屋に行くし、ちょっと間違ったことすると怒鳴るし、食事も一緒にしようとしない。みんなでジイちゃんとダンランを楽しんでるとこに、アンタが登場するとサイアク。あったかい雰囲気が急に寒々しいものになっちまう。これじゃあ、ジイちゃんも耐えられねえよ。いったい何が気に入らんのよ。アンタのオヤジだろうが。

 そんなこと言えた俺じゃないか。アンタがジイちゃんを嫌いなように、俺もアンタのこと嫌いだもんな。俺に話しかけようとすると、俺もトットと自分の部屋に逃げるし、食事も一緒にしたくないし。怒鳴れば俺も怒鳴り返すし、最悪の状態だよな今の我が家は。崩壊寸前だわな。

 そこで反省。俺もアンタから逃げるのはよすわ。俺に対する不満や文句があるなら聞く。多分、早くバイトを辞めてどっかに就職しろってことだろうけどな。その代わり俺の言い分も聞いてもらう。俺なりに目標と目的があってバイトやってんだから。それをちゃんと説明するよ。

 さらに俺からの注文。オヤジ、最近イライラし過ぎ。俺やジイちゃんにだけでなく、妹やオフクロにも八つ当たり気味だ。自覚してねえだろうけど、仕事が関係してんじゃないの。仕事先から電話があったとき、必ずイライラムカムカ。これは俺たち家族じゃどうにもできないから、精神科とか心療内科に出かけて、それなりに解決して欲しい。心の病気は怖いってテレビでもやってた。

 ジイちゃん、後悔してたぜ。オヤジにはことさら厳しく接して育てたから、今も恨んでいるんだろうって。だけど、そんなヤワでケチな男か、オヤジはよう。オヤジは必死になって俺たち家族を養ってきたんだろうが。ヤワでケチな男じゃそんなことできないっつうの。誇りに思えよ。自分のことを、そして強く育ててくれたジイちゃんのことをよ。いずれは俺もオヤジの面倒を見なきゃならねぇ。そんときはなんでも話せる、仲のいい親子になってようぜ。(2011年12月11日)

父 53歳:自営業
息子 22歳:アルバイト



  中国に一度遊びに来てください。誤解も解けるでしょうから


 親父さん、元気ですか。不肖の息子の手紙なんぞ、読みたくないかも知れませんが、一筆したためましたので我慢して読んでください。

 中国での日本人と日本政府に対する印象と雰囲気、これは相変わらず厳しいです。庶民が利用する食堂や酒場に行き、僕が日本人と分かると、雰囲気は険悪なものになり、議論を吹っかけられ、殴り合い寸前にまでなったことが何度もあります。そんなとき、身を挺して救ってくれるのが、親父さんの嫌いな僕のカミさん、中国人の彼女です。僕にとってはまさに彼女はカミサン、神様です。

 公務員の親父さんにとって、僕は頭痛の種でしたね。小中学校は悪がきで、いつも学校から呼び出されて注意を受け、高校では暴走族同士の乱闘で退学。勤め始めたのはいいけど、そこはいかがわしい台湾パブ。そこで出会った出稼ぎ中国人の女性と同棲、そして相談もせずに勝手に結婚。僕よりも年上のバツイチとあっては、「勘当だ。中国人の女房と一緒に、日本から去れ」と絶縁宣言。

 親父さんの外国人蔑視、なかでも中国、韓国、北朝鮮、台湾人に対する蔑視に、子供の頃から反発を持っていた僕もそれに応じ、カミさんの故郷である上海へ。日本人ビジネスマン相手のパブを開き、親父さんを見返してやろうと必死になって働き続け、今年で五年目を迎えました。

 店の評判は、お袋さんや姉貴たちから聞いているでしょう。評判も売り上げも上々で、年内に3軒目の支店を持つ目途もつきました。これもそれも親父さんが僕たちに絶縁をしてくれたおかげ、「中国で野垂れ死にでもすればいい」と、突き放してくれたおかげです。皮肉ではなく、心からそう思っているんです。

 開店当初は苦労の連続でした。だけど会員制にしてから、上客がつきはじめ、それが口コミとなって上客を連れてきてくれる。やがて、日本にビジネスチャンスを求める中国人たちも集まり、高級サロンのような形態ができあがったんです。上流階級に属する中国人たちは役人や当局にも顔がききますから、反日運動やそうした動きがあると、事前に僕たちに連絡を入れてくれ、警備にも万全を期してくれます。ビジネスを通して日本と中国は、もはや断ちがたい太い関係を築きつつあるんです。儲けるだけ儲けるつもりですよ。

 「今度は金の亡者か」なんて蔑まないでください。僕とカミサンの夢は孤児たちの施設を作ることです。中国では金持ちが増える一方で、今日の食べ物にも泣いている孤児たちがとても増えている。そんな孤児たちに、最低限の生活と教育の機会を与えたいんです。中国の友人や知人たちも協力を惜しまないと言うし、僕を誇りに思うとも言ってくれる。

 親父さん、中国という国、人々は懐が深い。いつか訪ねてきてください。誤解も解けると思いますよ。(2011年12月18日)

父 57歳:公務員
息子 28歳:自営業




  我が家も「劇的ビフォー・アフター」しようよ


 今にも陥没しそうだわ、壁は汚れきってベトベト状態。だからだよ、ゴキブリが我が物顔で走り回っている。なんとかしてくんない、お父さん。

 築45年といえば、世間じゃ老朽化というんだよ。もうリフォームしてもいいじゃん。両隣なんか、築25年目でリフォームしたんだよ。両隣じゃ、我が家のことをなんて言ってるか知ってる? 「高度成長期の臭いを残すレトロ建築」だってさ。なんのこっちゃ、単なる限りなくみすぼらしい家ってことじゃん。悔しいと思わない。情けないと思わない。

 私とお母さんが毎週欠かさず見ている、リフォームを取り上げた番組。見終わって毎回、泣きますよ。感動しますよ。ため息が出ますよ。同時に、「なんで我が家ではリフォームが無理なのか」って結論に達する。お母さん情報によると、リフォーム費用はあるという。だけど「もうすぐ東京に大地震がくるから、リフォームしても無駄だろう」って、お父さんはいつも却下。誤解だっつうの。

 優良といわれているリフォーム業者のホームページ覗いてみなよ。今や耐震・免震構造は当たり前だよ。どこの業者も、阪神大震災を教訓にして、優れた素材や構造で勝負してんだよ。それに快適性やら、将来の家族構成やライフスタイルにまで配慮した間取りや設計もしている。お父さんが将来もしボケたとしても、それに対応した設計変更も可能なんだ。勉強してんだよ、私なりに。

 そもそもさ、この家はお爺ちゃんが建てた家だよね。お父さんはただでこの家を譲ってもらったんだよ。家に対してはまだ大きな出費してないじゃん。出費がなかったおかげで大学まで行かせてもらっているのには感謝してるよ。だけどここいらで、我が家で唯一の後継者たる一人娘のために、リフォームをってのはどうよ。私の結婚待って、その際に二世帯住宅を建てようってのは現実的じゃないよ。結婚しないかも知れないじゃん。仮に結婚したら、ダンナに二世帯住宅建ててもらうもん。だから今はリフォームが優先だっての。

 このままじゃお母さんだって哀れじゃん。「老朽化するままの家と私」って、気分的に落ち込んじゃってるんだよ。もしリフォームしたら気分一新、服装もお化粧も態度も、明るく生き生きとするはずだね。20歳は若返る。若返った妻が待っているんだから、お父さんもパブとか居酒屋に寄らずに直帰、我が家で晩酌。家計も助かるって一石三鳥の効果。
 
 どうだろうね、リフォームのこと再考してもらえんだろか。お父さんだって家長としてイイとこ見せてよ。それで家族三人、劇的にビフォー・アフターの人生を切り開こうよ。(2011年12月25日)

父 47歳:公務員
娘 22歳:大学生