八戸自由大学第5回講座より抜粋

講座名
 おがみ神社からみた、三社大祭の今と昔


講師・松本徹氏(おがみ神社法霊神楽保存会会長)

松本氏プロフィール 
八戸市立小中野小学校、小中野中学卒業。青森県立八戸西高校卒業。明星大学理工学部土木工学科卒業。伊藤建設(株)を経て松本プロック入社。

講座より抜粋

八戸の神楽と法霊神楽
 八戸市に伝わる神楽とは、山伏によって行われた神楽であり、修験道の布教のために演じられたものである。また、民衆の興味を惹くために儀式的な舞、演劇的な舞、曲芸的な舞なども演じられた。それがやがて一般人が行うようになった。特に明治政府の神仏分離政策により、山伏の活動が制限されるようになった時代が、大きな転換となったと思われる。
 盛岡藩の家老が記録した『雑書』には、承応二年四月十八日(1653)付けで、藩主南部重直の病気平癒祈願のために神楽を行ったとの記述があり、法領社(現・龗(おがみ)神社)で湯立神楽を行ったとある。
 山伏系神楽で古い歴史を持つ神楽は、岩手県花巻市大迫町の早池峰神楽である。文禄四年(1595)銘の獅子頭が残っており、起源は中世にさかのぼる。八戸の神楽は、芸態などから早池峰神楽に関係が深いと思われる。また、日乞い、雨乞い、豊作、豊漁乞いの祈祷のために神楽を行った記録も多い。南郷区荒谷地区では、同地区にある新山権現の獅子頭を川に入れ、雨乞いをしていた。現在、八戸市で伝承されている神楽は「鮫神楽」「白銀四頭権現神楽」「矢沢・大仏神楽」「笹の沢神楽」「浜市川神楽」「法霊神楽」「御崎神楽」「野場神楽」「中野神楽」「島守神楽」である。
 龗神社の法霊神楽については、『八戸藩日記』に法霊社で神楽が行われた記録があるが、法霊社直属の神楽集団ではなかった。法霊社での神楽は藩内各地の山伏によって行われていた。法霊神楽として誕生したのは戦後である。龗神社神楽がないことを残念に思っていた有志の人々が、八戸市鮫町に在住していた西舘亥之助から習って始められた。西舘は岩手県軽米町出身で、同県九戸村でも神楽の経験があった。また、笛は八戸市尻内町字大仏の山本初太郎から習った。現在の演目は「権現舞」「墓獅子」「八幡舞」「翁舞」「山ノ神」「鳥舞」「三番叟」「番楽」「猿田彦の舞」「普将荒神」「剣舞」「小獅子」「傘舞」など。
 

龗(おがみ)神社と最初の神輿行列
 人々は親しみを込めて「法霊(ほうりょう)さん」と呼んでいる。例大祭は九月二日。祭神は高龗神(たかおがみかみ)、水神、竜神の龗神のことであり、祈雨、祈晴の神様である。かつては八戸城地に鎮座していたといわれている。勧請年代ははっきりとは分からないが、鎌倉時代から法領明神の別当で代々大善院と称されており、寛永四年に再建された。南部二十七代利直の時代に再度造営されたと伝わる。さらに寛文四年(1664)に八戸藩が独立し、現在地に寛文六年九月二十日に遷座した。これにより時の別当大善院寛久に八戸総鎮守の命があり、南部家代々が崇信した。文政八年(1825)、八代信真のときに再建された。これが現在の社殿である。
 言い伝えによると、法領という修験が、日照りに雨乞いをしたが効果がなく、農作物が枯死するのを見かねて竜神に身を捧げて池に投じたところ、にわかに雲がたちこめ降雨をもたらしたので、その神徳を称えてお社を建立したという。竜神は稲作、水の神様、農耕神なので、藩政時代から領民に崇拝されてきた。八戸藩の藩神でもあり、藩主の祈祷所でもあった。風鎮祭、安穏祈祷、悪病退散祈願などが行われている。
 県南最大のお祭り「三社大祭(八戸祭り)」は、享保六年(1721)七月十九日に、法霊社のお神輿が八戸の町を一巡して長者山へ渡御、二十一日に還御したのが始まりである。祭礼行列の順路は二の丸にある法霊の社殿から出発し、城内の表門(南門)を通って城下の街地に入った。札の辻から西の三日町方面に曲がって表町を荒町まで進み、ここから裏町の廿六日町に出て、十六日町から寺横丁へ曲がり、大工町、鍛冶丁を経て長者山の旅所に至った。二十一日のお還りは長者山から前日のルートの逆である。この道筋は当時の城下の町人町を一巡するルートで、お通りは上町通りの表町から裏町へ、お還りは下町通りの裏町から面町へと、町人の心意気を示した渡御行列が続いた。行列の次第はお神輿を中心にその前後に幟(はた)や鉾(ほこ)、獅子頭や神楽、さらには踊り子などが付きしたがい、鉦(かね)、太鼓、笛、法螺(ほら)なども、お囃子を奏でながら行進に加わった。
 やがて、城下の商業の発展、繁栄を願い、現在のような進行形式になった。明治時代に入り、長者山新羅神社と明神宮が加わり、三社祭りとなった。平成十六年に国の重要無形民族文化財に指定されている。(参考資料・「八戸三社大祭の歴史」(三浦忠司著 八戸歴史研究会) 「八戸市史」)

講座の後、松本氏ほか三名の法霊神楽保存会会員による「権現舞」「翁舞」などが披露された。