八戸自由大学第9回講座より抜粋


講座名

「あなたの食卓に牛肉が届くまで}~安全でおいしい畜産物をお届けする研究~

講師 1部:押部明徳氏(東北農業研究センター・畜産飼料作研究領域領域長)
    2部:今成麻衣氏(同研究員)

講師プロフィール

押部明徳氏 1957年兵庫県神戸市生まれ。酪農学園大学獣医学科卒。岩手大学大学院獣医学修士課程終了。農林水産省入省。国際農林水産業研究センター・国際研究調整官などを経て現職。

今成麻衣氏 新潟県南魚沼市生まれ。新潟大学大学院自然科学研究科生体機能専攻。独立法人「農研機構」東北農業研究センター研究員。

『東北農研』(東北農業研究センター)については下記を参照
http://www.naro.affrc.go.jp/tarc/introduction/chart/index.html

講座より抜粋

1部 最近は国産の稲を原料とする飼料が牛、豚、鶏に与えられている。その背景と現状について。

飼料穀物の輸入状況
○飼料穀物の輸入量は、近年、14百万トン程度で推移。主な輸入先国は、米国、オーストラリア、カナダ、アルゼンチン。

米国のとうもろこし需給
○飼料穀物のほとんどは輸入に依存しており、特に、米国・オーストラリアに大きく依存。

○米国でのとうもろこし生産は、作付面積が1937年(昭和12年)以降最大となったものの、本年6月以降、コーンベルト地帯での干ばつの影響により生育状況が悪化し、収穫量が減少。

最近の諸外国の動き
○穀物相場の高騰を受け、米国内のバイオエタノールの生産量は減少傾向。
○国内飼料メーカーでは、とうもろこしの調達先を多角化するとともに、とうもろこしに代わり小麦を利用する傾向。

配合飼料価格安定制度は配合飼料価格の上昇が畜産経営に及ぼす影響を緩和するため

配合飼料価格安定制度の概要
、、
①民間(生産者と配合飼料メーカー)の積立による「通常補塡」と、
②異常な価格高騰時に通常補塡を補完する「異常補塡」(国と配合飼料メーカーが積立)の
二段階の仕組みにより、生産者に対して、補塡を実施。

飼料自給率の現状と目標
○ 飼料自給率を38%(32年度)に引き上げることを目標とし、飼料基盤や機械の整備、飼料用稲の生産拡大食品残さの、飼料化(エコフィード)の推進等を支援し、穀物相場に翻弄されない足腰の強い畜産経営を実現。

○ 23年度(概算)は、原発事故の影響により粗飼料自給率が1%下がったものの、飼料用米の増加などにより、飼料自給率は対前年度比1%増の26%となった。

○ 飼料用米及び稲発酵粗飼料(稲WCS)の平成23年度の作付面積は対前年比で、飼料用米は約2.3倍、稲WCSは約1 5倍に拡大
※稲WCSとは、稲と稲穂と茎葉を丸ごと乳酸発酵さた粗飼料のこと。

未活用資源の飼料としての活用推進
○ 飼料の自給率向上のため、エコフィード(食品残さ利用飼料)を推進。また、改正食品リサイクル法(平成19年12
月施行)に基づく基本方針等において、再生利用に当たっては、飼料化を優先することが明確化。
○ 「安全性確保のためのガイドライン」の制定(平成18年8月)や「エコフィード認証制度」の実施(平成21年3月)によ
る安全性及び品質の確保、「エコフィード利用畜産物認証制度」の実施(平成23年5月)による理解醸成等を推進。
○ これらの結果、エコフィードの利用量は着実に上昇。(平成15年度8万TDN㌧→23年度28万TDN㌧)

組換えDNA技術応用飼料への対応
「飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令」に基づ
き、安全性審査を法的に義務化(平成15年4月1日施行)。

各種有害物質への対応
① 農薬
農薬に関しては、我が国で使用の多い輸入飼料原料を中心に、穀類及び牧草に使用される農薬について残留基準を設定(平成18年5月29日施行)。一方、近年、国産飼料として牛への給与割合が増加している稲わら及び稲発酵粗飼料に使用される農薬について、指導基準を設定(平
成24年4月9日最終改正)。「国外で使用される農薬に係る飼料中の残留基準の設定及び改正
に係る要請等に関する指針」を発出(平成22年2月2日)。国外で新たに飼料作物に使用される農薬に対する飼料の残留基準設定に必要な手続等を示し、基準設定を促進。

② 汚染物質(かび毒、重金属等)
かび毒、重金属等に関しては、汚染実態調査等に基づき、配合飼料や飼料原料に対する指導基準を設定(平成24年4月9日最終改正)。

③ 放射性物質
放射性物質に関しては、東京電力(株)福島第一原子力発電所事故による放射性物質の降下に伴い、飼料中の放射性セシウムの暫定許容値を設定(平成24年3月23日最終改正)。
通常より高いレベルの放射線量が検出されたことのある県に対し、牧草等中の放射性セシウムの含有実態を把握するための調査(定点調査)を実施するよう指導。

④ 飼料等への有害物質の混入防止に係る対応
平成20年3月10日に「飼料等の有害物質混入防止のための対応ガ
イドライン」を制定し、飼料の輸入、製造、輸送及び保管の各段階
における対応を明確化。

                      第2部

              和牛と国産牛

         牛トレーサビリティ制度とは

  牛1頭ごとに付けられた個体識別番号を検索することによって、農場にいる牛や、小売店や料理店などで販売・提供されている牛肉が、いつ、どこで生まれ育ち、と畜されたのか、という履歴を追跡することができます。  

牛の各部位(部位に適した調理法がある。スネはシチュー、バラは焼肉、ヒレなど。短角牛に関しては、高名な日本人フレンチシェフによって、様々な料理法が開発され、提供されている)
 

 原産国が日本となる牛(出生からとさつまでの期間で最長飼養地が日本となる牛)が国産牛

 国産牛のうち、品種等の条件を満たし、日本で生まれ育ったことが確認できるものが和牛

牛の種類

  牛トレーサビリティ制度では牛の種別を11に分類しています。
 乳用種は搾乳を目的に飼う品種の総称、肉専用種は牛肉の生産を目的に飼う品種の総称で、血統登録など書類で特定の品種等に区分できることを確認できる場合は、ホルスタイン種、黒毛和種などに分類されます。

牛肉の銘柄

  牛肉には、産地、品種・種別、枝肉の格付、飼育方法など、様々な基準に基づいて、○○牛といった銘柄(ブランド)が定められているものがあります。近年は特許庁の「地域団体商標制度」に基づく商標登録を行ったブランド牛肉も見られるようになりました。

             もっとおいしい牛肉作りの取り組み

○地域の牛や餌を活かした牛肉の開発と生産
○環境の負荷をできるだけ低減して生産される飼料を使用
○有機短角牛の生産(一般的な短角牛に比べると肉色の劣化が早かったが、有機飼料を与えることにより、以前よりも肉色の劣化速度が遅くなった)